空星


 

 







きっと、だれもが知らなかったはず。

地球がこんな色をしていたなんて。

太陽の光を浴びた、地球。

どこにも落ちることなくまわっている。




キレイ、とか、キタナイ、とか。

そんな言葉で飾りたくはない。

今、一人でいる今。

それだけがたったひとつの希望で。

ぼくはまだ、そこにいたかった。




遠近感がつかめず、月も地球もおなじところにある。

みんなみんな、おなじところにあるようにみえる。




たくさんの、残骸が。

目の前を通り過ぎていっては、どこまでも流れてゆく。


自分が壊したのは、どれだろう。

自分が壊したのは、だれだろう。


そんなことしか考えられなくて、哀しくなる。



そう、ぼくはいつまでたっても情けない。




泣くことしか出来ない。


別れのときも、

戦い終わったときも、

すれ違った時も、

ころしたときも、

ころされたときも、

なにかがこわれたときも、

だれかがしんでしまったときも、


しんでしまって、しんで、ころして、


泣く。



泣いて・・・どうして・・・

どう・・・・・・



どうすればいいのか、何も分からない。

もう頭の中がごちゃごちゃだ。

今、なにも考えたくなかった。




すこし、ねむろうか・・・・・・。
















『・・・・・・ーラー!』


声がする。

懐かしいなぁ、あのころ。


『キラー!』


まだ幼かった、あのころ。

またここにこれるなんて、夢みたいだ。

それともこれは、夢だろうか?


そんなことはどうでもよかった。



『キラ!』



今よりもほんの少し少ない藍色の髪。

今とおなじくらい輝いている、グリーンの瞳。


みんな、いた、この日。


ぼくは平然とこの地に立って、笑っていたんだ。



『アスラン』



呼ばれたから、呼び返す。

そんな当たり前のことが出来たんだ。



手。

手が、暖かい。



『おかえりなさい』



どっちが言った言葉だったろうか?

どっちが、迎えた?

迎えてもらった・・・・・・?



『おかえり、なさい』



おかえり。

懐かしい。

全部全部、懐かしいね。


暖かい光が、言葉となって、弾けとぶ。




――おかえりなさい、キ・・・・・・・・・・・・・・・・・・











眠れなかった。

ぼくは、ここででは、眠れなかった。


だって、みんなまだ生きてる。



みんなと一緒に、帰ってもいいだろうか・・・?

出迎えて、もらえるだろうか・・・?




そんなときだった。


ちいさな光。



絶対零度の宇宙では、その距離なんて分からないけれど。

だんだんと大きくなっていくのだけは分かった。




あの頃より、少しだけ多い藍色の髪。

ひつものように、光り輝いている、グリーン。

思いでを置いて、今それに手を伸ばす。



≪・・・ラ!!≫



くぐこもった声がする。

懐かしい、ね。


こんなにも・・・愛しい

暖かいものだったなんて・・・

あらためてわかった。



ありがとう、ありがとう。





  「キラ」

 「アスラン」





手を握ると、ただただ温かい。

それが本当にうれしかった。



ありがとう




きっと、だれもが知らなかったはず。

地球がこんな色をしていたなんて。

太陽の光を浴びた、地球。

どこにも落ちることなくまわっている。




キレイ、とか、キタナイ、とか。

そんな言葉で飾りたくはない。

今、みんな一緒の今。

希望に満ちあふれている、ぼくたち。

みんな、そこにいてくれた。




遠近感がつかめず、月も地球もおなじところにある。

みんなみんな、おなじところにあるようにみえる。




みんな、おなじところに、ある。

 

 

 

                              2006.9.13

                              

 

 

 

 

あとがき(反転)
     キラ独自です。
     生き残ったこと、そして今ここで生きているということを考えてます。
     このサイトのメインSSですね。
     タイトル空星ですから。